はしがき   目次に戻る

 ずーっと昔ん話ば、子でん孫でんに話しよったこつも、でーぶん昔になってしもうて、もう知っとる 年寄も少なかし、残っちゃる人でん忘れちゃるこつの多かけ、まー一時すっと全部、昔話ぁ消えち無う なるこつぁ間違いなか。そりゃあ無うなっとにゃ無うなる理屈のあるこつぁ知っとるばって、先祖さん の生きて来らしゃった形見ち思うと惜しかごつぁる。そっで書き残しとこち思うて、明善校ん時の恩師 篠原正一先生に相談したら「そりゃ良かこつぢゃけ急いでやんなさい。此処にちーった資料もあるけ ん、こりも参考にして一生懸命やんなさい」ち、先生の五十年以上かかって集めとんなさった、大事か 資料八冊ば貸して下さった。そっで、こん資料ば元に、南薫の中州喜代次御夫妻ん話やら、各区の公民 館、お年寄達から、ちょこちょこ話ば聞いち廻って、勿論昔の書物からも拾い上げちから、ようよ此っ だけんもんちゃけ、一ちょ一ちょ良うと話に纏め上げにゃんが、色々彼色で、忙しゅうなって暇ん無か 。暇も無かが本なこつあ、起承転結、詩情豊かに書上ぐるち言う文才の無かけ、狡かばって聞き書ばち ょいと直して読うでもらうこつにした。文の纒っとらん上、久留米辯ちゃけ読みにっかろし、主語ん無 かったりで意味のわからんとこん多かろち思うばって、此りゃー後で、ゆうっくりなってから書替ゆる つもり。まー此りゃ話の種ち思うて読うで下さい。
 唯、こげな碌すっぽか本にして、折角資料ば下さった篠原先生はじめ、他の人達それに忙しかつに色 々御教示下さった古貝幸雄・内藤正夫・坂田健一の諸先生方に申訳けなかち思うと同時に、心からあり がとうございましたち御礼申し上ぐる次第てす。
昭和五十三年二月二十日
松田康夫

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