「岩の谷の里づくり」をテーマに、長岩城やくど作り民家がある新川田篭地区には中心となる「四季の舎ながいわ」と宿泊施設「日森園山荘」があり、都市住民との交流施設となっています。
平成10年にオープンした四季の舎ながいわでは、こんにゃくづくりなど地元の素材を使った料理体験ができます。囲炉裏を囲んで石焼き地鶏や棚田そばなどが楽しめるレストランや里山のお風呂「四季の香」があり、山里を訪れた人々がほっとくつろげる空間です。
公民館として利用している地区150年の民家を改修し、宿泊施設としても利用できるようにしたのが日森園山荘。
テレビもない代わりに囲炉裏を囲んだ雰囲気があり、チェックインチェックアウトも自由という気兼ねのなさです。ただし、公民館なので、地元の冠婚葬祭が最優先です。
右上/四季の舎ながいわ。
右下/山の自然の恵みや畑の収穫は、地元の人たちの手で美味しい加工品となる。山里に伝わる料理法を習いながら、出来立てをほおばる至福の教室。
人気漫画「クッキングパパ」は、主人公が誰かのために毎回料理をつくっては、笑わせ涙ほろりとさせるほのぼの超大作です。作者うえやまとちさんは浮羽郡の田篭に住みながら、毎日漫画を書いていました。田篭での体験を描いた「ばさら駐在所が知る人ぞ知るデビュー作。
「山のアトリエも台風で壊れてしまいました。でも田篭に住んだ3年半の思い出はちっともこわれていません。ボクの漫画の原点・原動力は田篭にあるのです」とは、とちさんから浮羽町へのメッセージ。
彼岸花も終わった10月下旬に行われる「ばさら祭り」は、初秋の風に吹かれながら通行手形を片手に新川地区を巡るお祭りです。山里の道の途中には、クッキングパパよろしくシシ鍋など、あつあつのご馳走が待っています。
山里の道をてくてく。ばさら祭りの風景。
昭和59年11月29日、僕は田篭の美住に住みつきました。それまで住んでいた博多のアパ-トが子供が生まれ手狭になったことも理由のひとつですが、東京の出版社の週刊誌連載が不調のままに終わり、心身ともに疲れ、どこか誰も知らない場所でゆつくり気分転換し、一から漫画を考え直してみたかったのです。
うえやま とち「ばさら駐在所」その13バスの話
田篭の村は、そんな僕の願いにピッタリでした。自然は美しく、人々は優しく、僕は毎日楽しく過ごしました。そしてこの生活を漫画にしたいと思ったのです。冒険活劇でも、SFでも、バイオレンスでも、エログロでもない、普通の平凡な額に汗して働く人々の楽しい毎日を。悪人も出てこない。事件もおきない....とてもマンガになりそうもない設定でしたが、東京や博多など街に住む若者には考えられないような、ステキなマンガを描けそうな気がしたのです。
そんな思いをこめて、僕は「ばさら駐在所」を描き続けました。マンガはもう終わってしまいましたが、もっともっと描きたかったと思います。あの田篭の素晴らしさは、まだまだ描ききっていないからです。