SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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おやつ | ||
うちのおやつは、織屋にお粥炊いてお八っ出しよったけん、お粥のときもあったばってん、 大方は、手打うどんが多かった。夏はそりばつーめとう冷して食べよった井戸水の夏あ手の 切るるごつつめたかったけん。 粉は、朝のうちからこねて用意してありょった。そりば、おっかさんてん、ばばやいてん、 おばやい達が打台で打ひろげて、うどんのごつ細そ切って茹で上げて、夏は冷して、冬はお 湯で、大鉢に入れてみんなで食べよったたい。 お醤油に、唐がらしてん、しようがてん入れて。時にゃ、うどんのごつ切らんで、一寸余り の幅で、二、三寸長さに切ってゆで揚げたつに、おきなこに、塩てん黒砂糖てんもみこんだ つばまぶしつけたりしても食べよった。ごろしち云よったたい。よそはよー田植てん取り入 れ時てんのお茶に出けよった風じやった。 村内のお八っにゃ唐きび(唐もろこし)どんよう作ってありよった。茹でたり焼たりしてよ そん子は食べよったが、あたしゃ疫痢ん毒てろち云うて食べさせられじゃった。村ん子のか ねての取りもんな唐芋のある時や、唐芋どん、たーくさん茹でて、家の出入口てん台所にど ん吊りこじょうけにどん入れて掛けてありよったたい。そすと、子供達や勝手に食べたか時 食べよったごたった。 時にゃ子供どんが「カカしゃん何かぁー」ち云うと「お仏供さんママどん食べろ」てん「喰 えー」てんち云うと、お仏供さんママどん引いて食べよった。お仏供さんな、よそは子供の 取りもんじゃった。うちはお仏供さんな頂いて食べにゃならじゃった。焼いて金山寺みそど んつけて頂きよった。 おとっちゃまんお里はどうしてじゃり、お仏供さんち云うと、不吉な物のごつしよんなさ った。いつかお仏供さんばそげんして頂いて食ぶる時、うち来なさった頃のお父っちゃまに 上げたりゃ、妙な顔しなさったたい。うち辺などこかに行く時だん、お神棚のお供えてんお 仏供さんば怪我のなかごつ、わざわいのなかごつち云うて頂いて行きよったが、どうして不 吉ち云うこつじゃったじゃり世はさまざまち云うが本当たい。 いつかうちの近所の子供が「カカしゃん、何か…」ち云うたけん、お仏供さんママどん引 いて喰えち云うたげなけん、食べて遊びに行ったりゃ水に溺くれて死んだげなち話したりゃ、 やっぱのう、ち云よんなさった。男の子だんなお、お仏さんのお供えだんいかんち云うこつ じやった。お仏さんちゃ死んだ者のけんち云うこつどんじゃっつろごたる。生きつとりゃ死 ぬとは当り前んこつばってんの。 |