杷木神社 |
所在:池田 |
杷木神社はもと、杷木二所大明神又は杷伎大明神ともいい、上座郡19か村の総鎮守杜である。 元禄年間の村名表によると、現在の朝倉町以東小石原、宝珠山、福井までを上座郡とし、郡は上郷と下郷とに分かれていた。今の朝倉町全域は下郷に当たり、それ以東を凡て上座郡の上郷といっていた。 杷木神社はその総社として奉祀されたもので、この杜の創建は古く、第26代継体天皇の御代といわれているが、かつて大友宗麟の所領であったころ、領内の神社仏閣悉くが彼によって焼き払われたことがある。 そのためこのお社に限らず、どこの神社にも縁起、旧記の類がなくその古事をを知ることができない。 天つ神の命を受けて、このただよえる国をつくり固めるべく、天の沼矛を賜って天の浮橋におり立ち、おのころ島を作り、それから次々に大八洲をつくり、諸々の神達を生み出されたのが、ここに祀る伊弉諾尊伊弉冊尊男女二柱の神である。 この伊弉冊尊が最後に火の神(カグツチノ神)を生む時、その出てくる局部が焼けて死んでしまった。伊弉諾尊はこれを怒ってその子カグツチノ神を斬り殺したが、その時飛び散った血潮が神となり武甕槌の神という武勇の神となった。これも杷木神社の御祭神である。 縁起によると、目子の峰に天降られた伊弉諾、伊弉冊、天忍骨尊より、「汝は南の国を豊かにせよ」との勅を受け、陰の馬杷を携えて豊後と筑前の境杷来山に来てここに鎮まられた大己貴命もまた、杷木神社の御祭神である。 大己貴命は大国主神、うつし国魂神、八千矛神、葦原醜男神など五つも名前をもち、181人も御子があったという。縁結びの神として出雲大杜の御祭神である。この大国主神には腹違いの兄弟が80人もおり、いつも兄神たちからいじめられ通しだったが、ある時兄神たちの荷物をもったされて大国さまが来かかると、皮をむかれた因幡の兎が泣きくずれているのを見て懇ろに介抱してやった。乱暴な兄神たちのいたずらの犠牲になっていたのである。 それ以来兎は大国さますなわち大己貴命の眷族としお仕えすることになったという。そのため杷木神社の氏子は昔から、御祭神の谷族である兎を殺さないばかりでなく、慶応3年10月には「御兎踊り」を奉納した、という庄屋の記録も残されてある。 . 昔の御社は川の近く元宮(今の御輿場)にあったもので、当時の大祭には千歳川(今の筑後川)を渡り生葉郡大石迄御輿の渡御があったという。 その御幸の途次、いつも川のほとりより白兎が現れて御神幸の先導をつとめたという御旅所の跡、浮羽町大石に兎渡島の名が残っている。 今から250〜260年前、宝永年間に今の大鳥居附近、すなわち池辺に遷され(この附近一帯は大きな池であり、池田の名もそれから出ている)、さらに享保3年(1718)には山上を切り開いて今の所に奉遷された。 大鳥居の建ったのはその翌年である。鳥居の脚部には「上座郡庄屋連」とありその名前が刻んであるが、250年の歳月はこれを摩滅させてしまって判読もできない。その一方には「池田中」と読める。 中額は博多明光寺の鉄相和尚の書で「杷伎神杜」とある。それから約40年後宝暦10年に本社の建替えがあったが、そのころは神殿だけで未だ拝殿はなかった。 「筑前続風土記附録」の挿絵によると、表参道の石段下と大鳥居の間に神池があり太鼓橋がかかっていたことがわかる。 今の拝殿は天保3年(1832)に新しく建てられたもので、それから13年後の弘化2年(1845)に大修理が施されている。 幕末のころには旱魃の時はお上から雨乞祈願の参詣が命ぜられる。長雨が続くと早祈願の参籠が指令される。その他郡代や代官奉行などの旅行の際は、道中安全の祈願祭が行われ、そのたびごとに庄屋連立会いのもとに行われていた。 「朝倉風土記」に載せられている杷木神社の末社は、息引神(元宮)立聞社(タチギキ)神明社(宗坊寺山)自現大明神(ムリクラ山)愛獄権現(三百月山)天満宮(石橋)秋葉社(辻山)稲荷杜(ヨシマル)とあるが、大正の末期、県の神社庁の命令ですべて杷木神社の境内に集められてし まったという。したがって秋葉社以外は創祀の地名もその跡も今は知ることができない。なお境内にあったはずの観音堂もその所在は不明である。 杷木神社の御神幸は元禄13年(1700)に始められ、庄屋井手藤七が自ら御輿二体その他の諸道具を調えて公儀へ願い出たものという。 春の大祭には昔から杜前に市が立ち、杷木市といって非常に賑ったが、杜地の周辺が田圃だったため、田畑を踏み荒し耕作の妨げになるからと、秋月種実のころ願出てこの祭市を久喜宮に移して杷木市といっていたが、後に志波の領主とな.った栗山大膳が、志波の町の繁栄を計って、この祭市を志波に移しここでもまた杷木市といっていたという。この杷木市が杷木に戻ったのは明治維新後のことであろう。 今は杷木神社の大祭その他年間行事は池田の氏子部落が一隼交替で奉仕している。 |
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