自 然 と 環 境

 山があり清いせせらぎがあり、田畑が四季の実りに満ちあふれている、そんな日本人だれもがイメージする“ふるさと”の光景が小石原には息づいています。
 小石原村は村土の90パーセントが森林。四方を標高300600mの山に囲まれ谷間が南北に続き、北部には小石原高原盆地が広がっています。そして小石原村を源流とし、西へ流れる小石原川、南へ流れる鼓川(大肥川)2つの河川そこには鳥や小動物、昆虫が生活し、四季の移ろいに草花の彩りがアクセントを添えます。
 春はカタカタとキツツキが木を鳴らし、目覚めの時を報せ、夏は杉の巨木が木陰をつくり、そこにさわやかな風が吹き渡ります。カエデや八ゼが色づく秋、やがて山里を白一色に覆う冬。豊かな自然はまるで山響の調べのよう。人々にやすらぎを与え、やさしく包んでくれるのです。

 ポツポツと木々が芽吹く頃、小石原は春
景色に包まれます。
新芽の淡い緑は、絵の具ではとても表せ
ないほどの美しさ、山里は素朴な彩りに
輝きます。
 タラの芽やワラビ、ゼンマイなどの山莱
摘みも、そんな春の楽しみです。
 そして小石原の花暦をめくってみると、
2月末の梅に始まって、サクラ、菜の花、
シャクナゲ、ツツジ、ドクダミの花と続きま
す。
 特に山の斜面をピンクや赤に染め上げ
るシャクナゲは1万本にも及び、行楽客の
目を楽しませてくれます。4月中句から下
旬頃が真っ盛りです。
 また、春に終わりを告げる頃、白く愛らし
く咲くのがドクダミの花。山間に足を踏み
入れると、そこは一面、白いジュータン。
名前からはとても想像できない可憐さが、
気持ちを和やかにしてくれます。
 小石原の春は、都会にはないやさしい色
に満ちています。
 小石原の夏は、自然と遊ぷ絶好の時
期。子供たちは森で昆虫を追い、釣り人
はヤマメやハヤをねらって川に釣り糸を
垂れます。
 夜は清流に光の乱舞。6月上旬から下
旬にかけてゲンジボタルが鼓川(大肥
川)の上流を飛び交います。
 カジカの声も高らかになる夏真っ盛りに
は、平地より気温が3度ほど低い小石原
は格好の避暑地といえます。
天を突くように伸びる杉木立が木陰をつ
くり、さらにさわやかにしてくれます。
 生まれたままの自然には、例えばカブト
ムシ、クワガタ、カミキリムシ。オオムラサ
キやキアゲハ、アオシジミ、アカタテハなど
のチョウが棲み、セミしぐれもにぎやかで
す。
家族そろってハイキングを楽しんだり、川
遊びをしたり、村全体がまさにネイチャー
ランド、自然相手の遊びの宝庫なのです。
 避暑地の夏が過ぎ、9月下句ともなれ
ば、小石原は朝夕がとても涼しくなりま
す。
 早い秋の訪れ、コオロギやスズムシ、
マツムシの鳴き方も次第に遅く感じられ、
そして、やきものの里・皿山の登り窯か
ら立ちのぽる陶煙も一層白くたなびきま
す。
 皿山周辺にはススキが揺らめき、棚田
には稲穂が黄金色に輝きます。
 稲刈を終える頃には、栗が実り、ナナカ
マドやカェデ、ハゼが美しく紅葉します。
 秋の小石原は様々な色に彩られ、しっ
とりとした風情が漂います。
 10月中旬の民陶むら祭りを終え、収穫
の喜びを分かち合う11月下旬の小石原
ふるさと秋まつりを迎える頃には、そろそ
ろ冬支度。山里全体がひっそりと静まり、
冬の足音だけが響いて来るようです。
 短い秋。
 しかし、山里を美しく豊かに染める季節
なのです。
 英彦山の初冠雪を聞くと、小石原にも
木格的な冬がやってきます。
 窯元も農家も眠りにつくようにひっそり
と作業をし、シンシンとした寒さが山里全
体を包みます。
 冬の小石原の楽しみといえば、満天の
星空を眺めることもそのひとつです。
 都心部と違いネオンなどの光害がなく
星座観測にはぴったり。自前の天体望
遠鏡や双眼鏡を持ってやってくる人たち
も少なくありません。
 また、雪景色の美しさも小石原の冬な
らでは。全村が30-40pの積雪で覆わ
れることもあり、家々の軒先にはつらら氷
柱が下がることもあるのです。
 杉木立に雪の白い花が咲き乱れる、そ
んな景色もまた情緒があるようです。
 キーンと冷たい空気が張り詰める冬の
山里。人も昆虫も小動物も烏も息をひそ
め、星空だけが美しく輝きます。


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