「矢部村誌」発刊に寄せて


矢部村は、村制施行百周年を記念して、村の史実や文化遺産等を集録され、ここに村誌を発刊されますことを心よりお喜び申し上げます。県下最高峰の釈迦・御前岳に源を発した矢部川は、緑豊かな山々を育み、下流域の肥沃な大地を潤し、民を育て多くの文化を興して来ました。本村は、歴史的にも古く八女津媛神社をはじめ、南北朝時代の御所として知られる大杣の御陵とともに、多くの伝統文化が幾多の時代変遷の中で培われて来ました。貴重な文化遺産と先人の郷土愛に深く感謝を申し上げます。

先人によって培われて来ました豊かな自然と多くの文化遺産などは、郷土の貴重な資源であり誇りでもあります。皆様とともに継承し、大切に保護しながら後世に生かしていくことが私たちの務めであろうと思います。しかし長い歳月の流れと科学技術の進歩、あるいは国際化社会や経済変動などの波は本村にも押し寄せ、村の様相も大きく変わっております。生活環境の変化、学校の統廃合あるいは鯛生鉱業所の閉山、日向神ダム建設に伴う住民の移動などと急速な時代変化の中で当時の様子や過去の歩み、また先人の努力により築かれました偉業は次第に忘れ去られようとしています。

このたび村誌が発刊されましたことは郷土の文化遺産を後世に残し、正しく理解して愛郷心を深めるためにも誠に意義あるものと思いますとともに、二十一世紀に向かっての村づくりに貴重な資料として生かされるものと信じています。

私たちの住む矢部村の自然の豊かさと永遠の繁栄を願いながら、村民の皆様が希望と生きがいをもてる村を目指し皆様と一緒に村づくりの輪を広めていきたいと思います。

二十一世紀は人間と自然の共存時代といわれていますが、私たちの村には豊かな自然があり郷土の貴重な文化遺産などが豊富に残されています。これからの村の発展向上を図る基礎資料として後世に継承され活用されることを願っています。

最後に村誌編纂にあたられました関係者の御労苦と御尽力に心よりお礼を申し上げます。

  平成三年一月

矢部村議会議長 中 司 政 行