SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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国分はほんに藪ばかり | ||
初手(しょて)はの、国分はほーんに藪ばっかりじやった。「あたしゃ、国分ん藪(やね)ん中 そだち、雀同様で口ちゃ冴ゆる」てん、「高良内ゃ山んなか、国分は名所、名所どころに藪がある」ちゅ う歌んあったたい。 藪(やぶ)の中にゃ、古うるか大っか樹どんが藪の竹ん上に、こう枝拡げて生い茂っとった。 藪の中のあっちこっちから、ほーんに澄み切ってうつくしか水んどんどん湧き出て来よった。 夏あ手の切るるごつ冷めたかし、冬はお湯んごつ湯気(ほけ)ん立って温(ぬ)うっかりよった たい。 流れん中にゃ、メダカ、ハヤ、ドンク、カマツカ、サザレ、んごたる魚どんがおりよった。 国分ん清水ちゅうて、どこにでん評判しとったもんの。そりばってん、今そげなこつ云うた っちゃ、初手んこつ知らんもんな、すらごつ(そらごと)ばし云よるごつ思うじゃろの。今は 藪も探さにゃなかごつなったし、川も臭うそどぶんごつなってしもうて。 初手は、その藪ん中に藁葺屋根どんが、とんぼとんぼ在って瓦葺ちゃお宮かお堂かお寺ど んで、人ん住んどる家は、そうのーご一新までは、松田の下屋敷が瓦葺じゃったかも知れん ばってん、その他はうちぐらいのもんじやっつろの。何んじゃ彼んじゃち、昔ゃやかましか ったけん、明治になってから瓦葺ん住い家は建って来たったい。 藁屋根も、後じゃ軒廻りてんな瓦の下(げ)ばおろしてあるばってん、初手は軒先まで藁葺 屋根の葺きおろしじゃった。台所先の流しの上てん、屋根のいるごたっとこは、竹瓦(たかが わら)ちゆうて、竹ば二つに縦割したつば互い違いにかみ合はせてどん葺いて、壁の腰張てん な、竹ば色々に編んだつで、たいがい張ってありよった。棚、椽台、濡椽、何にでん板のか わりによう竹ば使うてあったたい。ぐるりは竹だらけじゃったけん。 村の家数も御一新頃は、国分中で七十軒余りしかなかったげなが、いまじゃ千軒どこんさ わぎじゃなかろうたい。 |