SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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清水苔 | ||
清水苔ちゃ、松田の婆さんな自分方が一番に庭の泉水に、朝倉郡の金川から持って来て入 れたち、村ん者に話しなさったげな。近藤が先、竹内が先ち、本家説もいろいろじゃったが、 うちの天保頃のこ仏事の書付には献立にも川茸てん、清水苔てんち書いてあるし、竹内太郎 左衛門さんから清水苔ばご仏前にもろうたこつも書いてあるたい。商売のごつ育て始めたつ は近藤が始めたい。東近藤の婆さんな、水のなかからお宝が出て来るちゃ、どうゆう有難か こつじゃりち、一生懸命苔田の世話ばっかりさっしゃるち、人話ば聞きよったたい。 建ちゃん方の跡は柳の苔田になり、学校跡も一段高かつが、低うなって権藤の苔田に成っ た。そん時に除けた泥土ば馬場ん田の青柳さん方辺一帯と清水の下の本戸さん方辺に積み上 げたたい。本戸さん方辺な、左右原(そーばる)ちゅうて、清水の先の冷めたか水の、一面に あっちこっち流れて田もよう出けんとこじゃった。いっときゃ苔田に成っとるとこも有った が近頃は出来んごつなったけんち、埋め立てよるちうこつじゃったが.....。 今じゃ苔田も湧水の少のうなったけん、あげんポンプで地下水ば汲み揚げにゃんごっなっ たたい。清水苔ちゃ、世界でも珍らしか水苔げながいまんなりじゃ、そのうち失(の)うなっ て仕舞おたい。 |