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    高良山くんち
   
  高良山くんちにゃ、この辺な初手から栗の入ったおこわ揚げたり、栗ご飯炊いたりしよっ た。そして新らしか織り立ての着物どん初おろししてお詣りに行きよったたい。わらじは いたり、草履にあとがけどんして、女も男も尻からげて、おなごは赤てん何てんの裾よけど んしとりょった。糸入り縞どん着とっとがよか着物じゃったたい。

  大っか鳥居のにきにゃ、ろくろ首てん見せ物小屋どんが掛っとりよった。後にゃジンタが ブカブカドンドン云わしよったが、ありゃずーっと後のこつたい。ジンタの音はこの辺迄も やかましかごっ聞こよったがのー。

  御手洗橋(みだれ橋)んにきにゃ杖ば貸す茶屋もありよった。ちょーいと割竹曲げて作った ごたる山かごどんが居って「お乗んなさい、お乗んなさい」ち云よったが、道の両側にゃ、 ほーんに乞食どんが、ずうっと並うですわっとりよった。

腐れんごたっと、足の無かつ、いざり、てんほんに居りょった。子供ん乞食どんな参りよる 者の前さん寄って来て先さん行かれんごつ、ねだりょった。

  ほんに可愛想な者が昔や多かりょったじゃろ、ばってん、なかにゃ夜になっと風呂にどん入 って汚れば洗い落して、りっぱな旦那んさんのごつなって着物どん着かえて町さんどん遊び 行きよっとが居ったげなばい。


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