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    夜 学
   
  専任じゃなかったばってん音楽も教えよんなさった近藤先生ち云う先生の今の篠山校の北 の方におんなさったが、その先生方に夜学に習い行きよった。稲次のミエしゃんも来よんな さった。外に何入か中学生達も来よんなさった。

あたしゃ三番目に居るとき佐々のよもしゃんと一緒に行きよったたい。田村ん行しゃんと、 も一人誰かじやったち思よったりゃ、佐々の孝しゃんじゃったげな、もうだい分忘れとるもんの。

中学生さん二人もいっしょに行きよったけん、帰りゃいっちょんえすうはなかったたい。
行しゃんも孝しゃんも親類じゃけん、うちも安心して一緒に遣りよんなさったたい。
ほかん中学生もみんなしゃんとしたとこの者ばっかりじやったけん。

  夜、真暗かとこば帰って来よっと、棚門からとろとろと下って、萃香園の方さん行く処ん にきにゴミ捨て場んあって、其頃お城の外濠ばゴミでうめたてよったったい。ようゴミば焼 きよったが夜までトロトロ燃えて時々ボーツと燃え上ったりしよった。

そうすつと行しゃん達の「そーら火の魂(たま)」てん何てん云うて、おどしよんなさった。 いつかは行っとるうちに雪の降り出して、帰る時にゃ大分積んどったが、その時分、お城う ちの山本に元気な女が来とったもんの。

その女があすこんにきからずうっと柵門のとこまで、道の雪ば竹ぼうきで掃わいて来て呉れ たたい。あすこのにきに竹の植わっとってそりが雪でこう下がって来とっとば、打っ払うた りして。

  そりばってん棚門のにき迄でもうよかけんち云うて帰って貰うた。あんまり掃わかせちゃ 雪の降りょっとに気の毒かけん。

  いつか行しゃんのそん時の話ばして、よもしゃんと、もう一人誰かじゃったもんち云いな さったけん、そりゃあたくしたいち云うたりゃ、国分ん者がどうしてじゃろかち思いなさっ たごたるふうで「ほう」ち云う顔しとんなさった。あたしが佐々に居ったこつば忘れとんな さったごたった。


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