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    卒業式
   
  卒業式も、一、二回生の時や"仰げば尊し"の歌がみんなが泣くもんじゃけん歌にならじゃ ったげな。三回生のあたしどんも、みんな悲しうして泣きよったばってん、どうやら歌うこ つは歌うたけん、先生のあとで三回生の時ゃどうやら歌うたの、ち云よんなさった。卒業式 のすんで、生徒の父兄が先生ば御案内しておごちそしたたい。

  作法室で卒業生の手作りのおごちそうで。そして卒業生のお給仕で先生と御しょうばんの父 兄に上げたが、その時分あたしがうちから通よった朝野中のにきで馬に乗った軍人さんによ う行き逢よったもん。その頃は、毎朝出会うごたる軍人さんたちにゃ誰でんおじきして行き よったけん、あたしも、その軍人さんにお辞儀するし、向うも失敬ばして行きよんなさった。

その軍人さんの来賓か父兄かで見えとったもん。そしてあたしば見て、「本当にあんたは、辛 抱強く通ったね」ち褒めなさったけん外の父兄の「ほー無欠席じやったのちお父っつあんに 云いなさったりゃ、その軍人さんの、「いや、無欠席とか何とかじゃない真面目に勉強したと 云うことです」ち云いなさったたい。

  ちょうどその年から補習科のでけたけん先生達や父兄ばつかまえて、どんどん補習科入学 ば勧誘しよんなさった。ちょうどそこにお父っつあんの来なさったけん、先生たちんほら来 たでつぐじり合うてお父っつあんにしっかりすすめよんなさった。
ばってん、うちはばばさ んが、そげん何時まっでん学校にばっかり行かんで、うちのこつどんして養婿ばせにゃ、ち 反対しなさったけん、補習科にすぐ入学ち云うこつにゃならず、いっときうちでごろごろし とったたい。


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