SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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もろもろの神まつり | ||
うちにはいろいろなお神ば、お祀りしてあった。山ん神ち云よったっは、山のてっぺんに 生えとった赤松の大っか木のこつじゃった。野中の山の、今ちょうど忠霊塔のとこにあった が、ああた達が予供ん頃はもう枯れてしもうて、棒のごつなって立っとったたい。 あの松の 根方にゃ塚のあって、文化、文政頃掘り出したげな、大っか石の中に朱づめの石棺のあった ち云うこつじゃったが、のちにゃ大っか石の一っ二っ松の根方に在るだけになっとったたい。 そりから八枝の一番東の端の方にこまか土饅頭の塚のあったたい。その塚にゃあたしどん が子供の頃迄は、大っか山桜の一本生えとったが、美しう花の咲くもんじゃけん、子供てん が其枝おしよると、そのたんびんに熱の出たてんちさわぎよったたい。 上ん段の藪のなかの楠と塚の山王さん、そのほかにも、塚てん木てんいくつかお神として お祀りしとっとこのあったけん、毎年新らしう"しめなわ"ば張り替えて、愛宕さんの神主さ んの大坪さんに来て頂いてお祓ばしよったたい。うちのお神棚も。 一ヶ所一ヶ所毎にお米てんおごく、塩鰤か塩鮭、お神酒(みき)ば上げよった。御飯炊いと くと、そのおはつ穂で神主さんの長うとがったおむすびば握って、お神棚さんに供えよんな さった。 どこでんお祓いのすむと、お供えのお神酒、米、塩、塩魚ばみんな長めごに入れて、男が担 うて神主さん送って持って行きよった。後ではだんだんそげな、お神てんお神の木のあると こも売り払うて無うなったたい。 一番しまえには上ん段の山王さんと楠だけばお祀りしとった。そして男もおらんごつなって からは、恒が神主さんのお土産ば持って行ったこつのあった。 まあだ子供じゃったけん、 帰りが暗うなって愛宕さんの石段下る時ゃ、神主さんの上から提灯で、石段ば照らしてやん なさったげな。えすかっつろうち。神主さんの後から話しよんなさった。恒ゃ「どーんなかった」ち云よったが……。 |