SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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米の貯蔵 | ||
昔ゃ不作の年てん何てんに備えて米もその年に穫れたつは直ぐは食べんで、翌翌年どん食 べよった。新米ゃ炊き増えんせんち云うこつもありょっつろばってん、まさかん時に備えて 貯蓄しよったったい。お祖父っつぁんの、「米と梅干さえありゃ、何とか食いつながるる」ち 云よんなさった。 しょては此方の藩で不作、向うん藩じゃ豊作ち云うたっちゃ、いまと違う て、おいそれと向うんとば此方さん持って来る訳にゃいかんもんじゃけん、二、三年な米の 取れんでん食べつながるるごつ、用意してありよったふうで、旧藩ごろの名残たい。 初手は飢饉の年にゃ笹米ち云うて、竹に実のなりょったげな。そっでそりばみんな、ちぎ ってさるいて食べたりしよったげな。そげな年にゃ村の困ったとこにゃ、どりしこか米ばや よんなさったふうじゃん、うちの者からは聞かんばってん、ぢいやいてん、ばばやいてんが、 お救い米ちゆうて出しよんなさったち話よった。 米ばなわしとくと、どうしてん腐るゝもん、色々して腐れんごつ工夫しよった。倉ん地面 に背のとばんごつ天っかかめば、ずらっといけてそれ入れとくと割合腐れじゃったばってん、 やっば上の蓋んにきは、ボクボクなりよった。かめも幾つでんじゃけん、よかしこ腐りよっつ ろの。酒倉にあるごつ大っか桶にも入れてありょったが、寒晒てんもうちで作りょった。毎年 作ってかめに入れたつに、何年の寒晒ち紙に書いて貼ってありょったつん、二階ば物置にし とったとこにずらーっと並べてありょった。 いつでん要る時にゃ使うばってん、餘るごつ作っといて、不時に備えてありょったったい。 そげんとば時々風にあてたり、陽にあてたりお守が大ごつじゃん。あげなこつで、そうに人 手の餘計に入りょったじゃろ。山ん番の子のお腹(なか)害(そこ)なうと、よう寒晒ば貰い来 よった。 寒晒でお腹んよーなるじゃろかち云よったばってん、かねて、堅かもんてん、こなれん悪か もんどん食べよんなら寒晒で団子どん作って食べさせた方がお腹ん休まりょっつろたい。寒 晒食べさすっと、直ぐ快(よ)うなりますち云よったけん。 "めのは"てんも一年分買うてかめに詰めてなわしてありよった。要るしこづつ出して使う たい。急にお客さんどんがあると、何にん上ぐるもんのなかけん、そげん時やかねて白魚ん ごたるもんも、どりしこづつか買うてありょったけん、白魚とめのはで酢味噌どん作って、 玉子の焼きはんべんどんがおごちそじゃったったい。 塩鯛でんありょったっちゃ、急ぎのお客にゃ塩出しせにゃんけん、間に合はんもん。生魚だ ん何時いらんな無し、始めんうちゃお豆腐てん揚げんごたるもんも、無かときが多かったた い。営所ん出けてからぽつぽつちょいとした物どんが出るごつなったたい。新しか店どんが 出けて。 |