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    しらみ
   
  初手は、虱もほんにおりよったたい。
  近所に遊びにどん行くと表に乾してある布団にどん、よう虱のごそーごそ這よるこつどん がありよった。うちにゃ虱はあんまりおったこつがなかったが、何時かどんなお祖父っつあ んの胸当てしてやすみよんなさったりゃ、その胸当てんにきの痒いかげなもん。見なさった りゃ、虱のおるげなもん。そりからたぎり湯かけて退治しなさったげな。

いつか伯母さんのうちに来とんなさったとき、どこかの出物の売り立てんあったけん、伯母 さんのほんによかけんち帯ば買うて来て、そりでなんか作る積りで解きなさたったげなりゃ 帯芯の、封のとこにズプーッと空になった虱の卵の塗ったごつついとるげなもん。

そしてそげんついとんなり糊つけて芯に縫うてあったげな。立派な側のついとっとにくさい。 あげん虱の卵のついとっと見たこつんなか、いくらなんでんち呆れとんなさった。

  子供達も頭にゃ虱がつきもんじゃったたい。いくら一人がよう退治しとったっちゃ、子供 同志頭ひっつけて遊ぶもんじゃけん、すぐうつるとたい。そりばってんちっと大きうなって、 髪に油どんつくるごつなると、不思儀にもう出けんごつなるけん、虱にゃ油が毒じゃろたい の。


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