SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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消防隊の創設 | ||
放水路の出来よる時か、出来上っとった時かはっきり覚えんばってん、三井郡てん久留米 てんに消防組が今んごたるふうに出来たたい。 お父っつあんもそのこつで種々骨折りょんなさるふうじゃった。そして放水路に消防組が 寄って何か催しのあったこつのあるたい。この辺なそこの小学校にあった警鐘ば、朝からガ ンガン鳴らして消防手が集ったたい。その頃の消防手の服装は、水色地に国の字ば丸形に白 う背中に大きう染抜いたハッピと、下はズボンじゃった。たてよこ幾すじでん糸引きそろえ て織ったゴブゴブした布で作ってあった。のちのごたる黒地に赤すじの入ったハッピてんな、 いつきまったかはっきりおぼえんたい。 其時はもう黒に変っとったかどうか、お父っつあんの姿はようおぼえとるばってん。お父っ つあんな、国分村の組頭になされとんなさった。三十才ぐらいじゃっつろ。黒の学生帽んご たる帽子かぶって、黒の詰衿の洋服着て、馬に乗って組員みんなば連れて出て行きなさった。 手押ポンプば車に積んで。どこかで国分のほかんとこの消防手とみんな一緒になって行きな さるちうこつじゃった。あたしゃ学校まで見に行った。 初手は、纏は長か箱に入れて、うちの表に置いてあったけん、火事の度に大騒動で、そり ば持ち出して、みんなが行きよったたい。何時か、夜中に何じゃりほーんにさわがしうなっ て目の覚めて、半分ねとぼけたなり、「なんごつの」ち云うたりゃ上ん段の藪の向うが火事 たい、ち云われて、びっくりして起きって出て見たりゃ、藪越しに真赤になって、バリバリ ポクンボクンち云うて燃えよるとの見ゆるもん。 大っか樹てん、竹藪こえて火の粉んチラチラ降って来よるもん。その頃までは藪の西側に、 わら葺屋根の穀倉ん在ったけん、その屋根に、何人でん人ん登って、竹笹で火の粉ば打ち払 よった。小まかったけんじゃっつろばってん、あたしゃ、えすうして足のガタガタ震えて仕 様んなかったたい。大っか樹てん、藪てんなかったなら、うちの穀倉は、焼けたか知れんち 云よんなさった。風は此方さん来よったげなけん。竹藪てんのあったっが役に立ったったい。 半鐘ちやくさい、お父っつあんの消防組頭しとんなさった頃、八軒屋の火の見の半鐘ば盗 人ん取ったち大騒ぎしたこつのあった取られた届けば警察に出したりしよんなさったが出て 来たもんじゃり、どうじゃり、あげな高かとこから重かもんばどげんどんして取ったじゃり の。 |