SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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筑後軌道から電車へ | ||
街の方はちっと早よ、馬鉄どんが通りよったばってん、軌道会社ん出けて、馬鉄が軌道に かわったたい。そこの県道ば筑後軌道の通るごつなったつは、.大正に入っとっつろか、はっ きり覚えん。 煙管のこたる細長か煙突からボン、ボン、ボン、ち丸か輪の煙ば吐き出してくさい。ほん にお伽話しんごたる汽車じゃったたい。 今から考ゆっと、引張る力も弱かったもん。山王さんの前ば曲って、東南の方さん少し登 っとろうがの、あすこ位の上りば、登りきらんで、ポンポン煙ばっかり吐いてくさい。そす とお客さん達が降りて来て、ワッショワッショち客車の尻押しどんしござっと、ようよう動 きょったたい。営所ん前から高良川渡って、天神山んすそ通って、いまの信愛女学院の前通 って矢取から工兵隊道ば通って、千本杉さん出よったばってん、北島から先やあい(間)もの う通らんごっなったたい。うちの火事の翌年じゃったか、川原ん橋の上の方の川端ば、国分 公園ち云うて、筑後軌道から蛍狩りどんがあったばってん、そりもいっぺんぎりでよう(止ん) だ。あすこば通らんごつなったつはその後じゃっつろか。 軌道に乗るとくさい、男達や威張って乗っとるもん。女子子供が乗って来たっちゃ、兵隊 さんだんときにゃ席ゆづってくるる者もおったが、そげな男達やゆずりゃせんたい。ドイツ の捕虜の来とったころ、あの人どんが街に行きよっとにどん乗り合はすると、すぐ席立って、 女子供ば掛けさせよった。おっ母さんな年のわりに髪がまっ白じゃったけん、皆がよっぽど 年寄ち思よったふうで、あたしゃ白髪のお陰でみんなすぐ席ゆづってもろて、気の毒かごた るち云よんなさった。年寄にゃやっぱ男達も席ゆづりょったふうたい。 そのボンボン煙の輪吐いて、行きょった汽関車は、のちにゃ煙突がくちなしの実の化物の こたる形んとに変って、そりゃ山王さん前の上りも、ねーごつんなし通りょったたい。 そりからのち電車になったたい。初め国鉄久留米駅から千本杉迄電車になった時、ばばし ゃまのアヤば電車に乗するち云うて、人力車に乗って、千本杉迄行って、あすこから街さん 電車で連れて行きなさったたい。小学校に行かん前じゃったかの。 三井電車ちゃ、早よう街の中、蛍川、日吉町花畑さんでけて、北野の方さんと、福島の方 さんと延ばして通るごつなっとったがありゃ、大正もなったばかりの頃んこつじゃっつろ。 |