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    岡野のはくらのぜんざい
   
  岡野んお祖父っつぁんの、大阪の蔵屋敷に、おいっとったとき、藩のご用で、大阪商人達 と話合いしなさるこつのあって、蔵屋敷に大阪商人達が何人か来るごつなったけん、久留米 からお供して行っとった仲間(ちゅうげん)に「大阪の商人達ゃ口ん奢っとるけん、おごちそ のあんばいばようしとかにゃんばい」ち仰しゃつとったげな。そりからそののち、商人達の 間で、「岡野さんのはくらのぜんざい」ち評判しよるげなもん。

お祖父っつぁんのそりば聞きなさって、仲間に「あん時のお吸物などげんしとったかの」ち 聞きなさったげなりゃ、「旦那ん様の、あんばいようせにゃんち、おっしゃんなさったけん、 お客の分だけ、お吸物お椀の中け、白砂糖ば、かけときました」ち云うたげな。主人のつにゃ、 亭主役じゃけん、あんばいようせんでよかろで白砂糖かけとらじゃったけん、お祖父っつぁ んなそげなお吸物出しとるちゃ知んなさらじゃったったい。

昔や白砂糖ちゃ大したもんじゃっつろけん、田舎者の仲間な、あんばいようせろち云はるりゃ、 お砂糖どん利かせたつが、あんばいのよかつじゃっつろもんじゃけんの、白砂糖入りの、はく ら(小鱸)のお吸い物ちゅうこつになったっじゃろたい。


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