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    山王さんの宮づくり
   
  上ん段の藪(五九六番地)ん中のちょうど真ン中よりかちょいと東寄りのとこに、高うなっ た塚のあって、その真西に十間余り離れて、小まか士饅頭んごたる塚のあったけん、良右衛 門さんの毎日参りよんなさったげな。

いつか、「ほんにこげんして毎朝欠がさずお詣りどんしよるが、どういうお方のお墓じゃり、 藪全体が盛土のごたるが、よっぽど身分の高かお方でばしあったじゃろ」ち思いながら拝み よんなさったげなりゃ、トーンち胸突かれたごつして、よろよろッとなって、後手突いて塚 の方ば見なさったげなりゃボーッと塔のごたるもんが塚の上に見ゆるげなもん、そりからやっ ぱこりゃよっぽどのお方のお墓じゃろち云うて、小まかお堂造って、山王さんば祭んなさっ たげな。

文化年中のこつでお堂は山本の前の伝之進さんの寄進しなさったちお堂の内側に書き附けて あるげな。御神体ゃ丁度公卿さんの座っとんなさる形の自然石たい。

  ところが其後、曾祖母(ひいばばおハエ)さんのこんだ夢見なさったげなたい。公卿さん のごたる夫婦らしかお方の立っとんなさって、男公卿さんな嬉しかごたる顔しとんなさるばっ てん、女公卿さんなさめざめと泣きょんなさるげなもん、こりゃ山王さんにお祭りしたつが 旦那んさんで、西の方の小まか塚が奥さんじゃろち云うこつで、西の塚の上に石の祠おいて、 お観音さんば祭んなさったつげな。こりゃお祖父っつあんのお話したい。

  次の話しもお祖父っつぁんのお話し。
  お祖父っつぁんの兄さんな、お魚取りが好きで、よう網打ちにおいりょったげな。いつか 足形堤に網打ちにおいったげなりゃ、清水の先の川の足形堤さん流れ込うどるとこんにきば、 ケシケシぼんさんのごたる子供んごたっとが深か方さん、さっさとと向うむいて入って行く げなもん。そして深かとこさん行ってずぶーんち水の中に沈うでしもたげな。

兄さんなぞーっとしなさって、こりゃ子供じゃなし、何か妙なもんに違いなかち思うて、そ んなり網も打たんなりで帰っておいったげな。そんとき近在に誰れん溺れ死んだ子も居らん じゃったげなたい。

  良右衛門さんな、天保十四年三月三日に六十八才でおかくれたげな。
  ちょうど三月三日で、山本にゃ、お節句のダンゴどんが出けよったりゃ、「真藤んおっつぁ んのおかくれたげなばい、お節句の段ろ」ち、常寛さん達のばばさん(良右衛門妹)のお台所 さん、云うておいって、大騒動になったげな。


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