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    「厄介」の廃止と士族
   
  明治四年に厄介名称の廃止されて、厄介じゃったとこは、士族何某家族ち云う取扱いに成った げな。お祖父っつぁんな、石田よリ、両親の出里の山本の方が身近かけん、そん時から士族山本 伝之進家族ち成っとんなさったげな。士族は士族ばってん、厄介は何某家族で一戸立の士族には 入れられとらじゃったげなたい。

馬廻役の厄介はお目見得どこじゃったばってん、ご家老、ご番頭へんの厄介は身分もずっと高かっ たつに、お目見得でん無かお徒士(おかち)足軽まで一戸立の士族に成っとるとに、自分達ゃ一 戸立士族じゃなかもんじゃけん、腹の虫の納まらじゃったげな。それに、新政府の大官に成った 人達の中にゃ、二本差しちゃ居ったばってん、足軽でさえなしに、奉公人ち云よったごたる人達 の大分あって、士族にゃ成っちゃ居らじゃったげな。

新政府は自分達の作ったつに士族にもなれんち、こり又腹に据え兼ねて、ブツブツ云よったけん、 明冶十五年に、厄介は改めて、一戸立で士族に編入するし、奉公人な新しう、士族に成って編入 されたげなたい。

  明治頃まぢゃ士族ちゃまあだご利益(りやく)のあったじゃろたい。よう士族株買うたの、売っ たのち話ば聞きよったけん。家柄ん欲しかけんち、よその士族株買うて、あたで士族ち云うたっ ちゃ、何しうにばってん、初手はそげんとこの多かりょったばい、金持てん何てんに。


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