SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語


    つっちやん
   
  つっちやんな、おそろしう交際家で誰にでんよかごつ云うもん、フサち云う女の来とったつに、 「チャンなフサおばやいがいっちん好いとる」ち云うて、また外の女の来っと、「ほーんに好い とる」ち云うとじゃもん。あたしん方は、フサの手に、「あなまたぐされ」んあったけん、「フ サおばやいはいっちょん好かん、あなまたぐされん出けとるけん」ち、ほーんなこつば云うもん じゃけん。どこでん、上ん子よりか下ん子の方が上手者が多かもんのう。

  つっちゃんな四っで死んだ。あたしと二つ違いじゃった。疫痢じゃったじゃろ、あたしと一緒 に痛うだ。あたしが弱んぼじゃけん、みんなあたしが方に気とられとったりゃ、ちょーいと痛う で死んでしもうた。二日か三日で。

  気の利いた子供じゃった。一人遊びの名人じゃった。いつかあたしが見よったりゃ。つっちゃ んが、お茶の間で、井戸から釣瓶ば手繰って水汲み上げて、首ばちょいと傾けて、運うで行って、 ジョーッち桶に水ば移す真似しよったが、ほんにとても上手じゃん。手どんこう振って歩くとこ てん何てん、どうしてあげん上手じゃったじゃろか。あたし同様きりようは良うなかったげな。 写真の一つーん無かもん。


前のお話へ  戻る      次へ  次のお話へ