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    お転婆さん
   
  馬入レ川んとこに水のいっぱい溜っとった。向うの方が泥のあってねり込みょったたい。そ りば知っとりながら、泥ん方さん行ったもんじゃけん、ブクブク沈うだけん、友達どんが引揚 げてやったたい。づぶ濡れしたけん、着物ば脱いで誰かの着物ば着て、川の向うに材木小屋ん あったけん、その材木の上に着物な干しとったたい。

夕方になって着物なまあだ乾かんばってん仕様んなかけん半乾きの着物着て、裏からこっそーっ と家に帰って見たりゃ、うちにゃ紺屋の藍つきのありょって、大釜にどんどん火の燃よるもん じゃけん、釜ん火に当る振りして知らーん顔して着物ば乾かしたたい、誰りん知らじゃったけ ん叱られんで済んだたい。

  土台、あたしもそーにお転婆じゃったっじゃろ。材木屋ん勘左さん方に材木積んであっとに、 雪のいーっぱい積んだ時ゃ、雪の上に顔ば押しつけて、顔の形ばいくっでん作りょった。一人 で家ば抜け出して、そげなわるさどんしょったたい。


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