SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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西原の赤松野山 | ||
国分から元の特科隊の方さん行く道の両側は、西原(にしばる)あたりから西の方さんずー っと、赤松どんが生えて、うさぎてん、きつねてんの居る野山じゃったげな。明治になって あけん開けたつげなたい。 御一新前後のこつじゃろ、西原の赤松野山ば二丁ばっかり十八両で買うてくれち、人の云 うて来たげなばってん、その時うちにゃちよいと十八両の融通が出来じゃったけん、山本さ ん云うて上げたけん、山本が買いなさったつげな。山本からのお話しじゃ、そののち飢饉で 村の者のほんに困ったこつのあった時、今で云うなら失業救済事業ち云うとじゃろ生活に困 っとる百姓達使うて、野山の中に古るか家ば大修繕して建てたり、泉水堀って庭作ったりし て、別荘になしなさったつげな。 昔や大地主てん大金持てんが、そげなこつばしして、困った者に働き場所作って現金収入の方法ばしてやらんなら、 外に今んごつ働くとこも無かったもんじゃけんの。今は本住家に成しなさったたい。 初手、学校に行きよった頃、朝霧のこう一っぱいかけて、権現松の上の方てん、立野の大 楠の頂きの方、山本別荘の松林の上の方あたりの、ほんに夢のごつ浮こうで、外にゃ何にん 見えず、あたしが霧の中ば一人行くとじゃん、もうあげな美しか景色だん見るこつも出けん ごつなったたい。景色の荒れてしもうて……。 |