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    うそかえ
   
  お祖父っつぁんのまあだ若かった頃、お正月に高良山に参りょんなさったげなりゃ、誰か 友達に会いなさったげな、そのお方ん、北野のうそかえに行きょっとこじゃけん、ああたも 来なさらんのち、すすめなさるげなけん、北野の天満宮さんの"うそ替え"に行きなさったげ な。木のうそが幾つでん出て、其中に一つ金のうそが出るげな。

神主さん達も裸になって知らん顔して金のうそば出すげなたい。集った者も、ぐじぐじ裸で もみ合うて「替えましょ、替えましょ」ち云うて手から手に木のうそてん本物の金のうそて んば渡し合うて行くげな、お祖父っつぁんな何時の間か自分の手の中に金のうそのはいっと つたげなけん、もう替えましょやめて、すうーっと、人んなかから出て帰って来なさったげ な。

  あのうそは、いまでんまあだお神棚には人っとるたい。小まかおづしのこたる箱に入って、 裏に北野の天神さんで替え当てたこつと、自分の名前と年月日ば書いとんなさるたい。嘉永 何年かじゃん。金色はしとるばってん、本な金じゃなかもん。お祖父っつぁんの二十一か二 十二の頃、じゃったけん、元気わりわりの頃んこつたい。


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