SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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節 分 | ||
節分な家の主人が、主人に支えのあるときにゃそれに代わる男が、大豆洗うて煎って撒く までばしよった。大豆煎ってお神棚におごくう(お御供)と、その煎り大豆ば供えよった。夜 になると家中ば美しう掃き出して、年男にゃ、お祖父っつぁあん、お父っつぁん、お父っちゃ ま、恒も小まかとき撒いたこつんあるたい。昔は裃着よったげなが、あたしが知ったころに は略して紋付、羽織袴じやったたい。 夜になると近所の子供どんが、ぐじぐじ集って、表の方に待っとるもん。まあだ、撒かっ しゃらんのち云うて。表のお座敷と、お玄関と、格子の間との、表の三間ば近所ん者んてん、 子供てんに拾ろわせよった。奥の方は、うちの者と男(おとこ下男)女(おなご下女)だけで拾 ろよった。よその者んな奥さんな入れよらじゃった。 お三宝に金盤桝に入れた煎豆ば載せて、撒きよったたい。福は内、鬼や外ち云うて、 子供達やごそごそ這い廻ってワァワァ云うて拾ろよった。面々(めんめん)来るとき、 紙袋どん持って来とるけん、それ入れてボリボリ食べよる子も居りゃ、持って帰りょる子も おるもん。うちにゃお神棚に供えたつば下げて、お茶出しに入れて、沸して福茶ち云うて頂 きよった。 金盤桝にゃ桝の口べりに、鉄の帯のついとるたい。そして斜に鉄の帯ん渡っとるたい。と かぎ、かけて計っとの、すりへったりして狂はんごつたい。公(おおやけ)に量るとき使よっ た。一升桝で量るとのせからしか時ゃ一斗の金盤升で量りょった。 |