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    大巡りのこと
   
  大巡り"ち云うてこの辺の弘法さん信心する者たちが、菜種どんが咲く時分、団体作って山 伏さんのごつ、ほら貝吹く者が先頭に立って、ブーンブワンブワンち云う風に貝ば吹き鳴ら して、錫杖どんシャランシャランちつき鳴らして行くと、その後から、竹ん皮で作った"たこ ん笠"どん被って、白か着物どん着て、づだ袋どんさげ、木の杖どんついて、その地方の信者 仲間で作っとるお札所ば、ぞろぞろ列作って順々におごうで詣ってさるくたい。

泊りがけで行く者が多かたい。泊るとこも信者仲間で、宿割して決めてあるけん、見ず知らず ん人の方に泊ったり泊めたりでお札所巡りするたい。

  うちへんな弘法さん信心ち云うこつはせじやったけん"大巡り"にゃかたったこつはなかっ たたい。

  弘法さんのお堂は美しうお掃除して、お前幕どん張って、そこへんの信者たちが、いろい ろな食べ物てんお茶てんば御接待(おせって)ち云うて出しよった。近頃の"大巡り"にゃ洋服 がけの者どんもあるごたるが、あげんして、のんびり巡って歩くとも楽しみの一つじゃっつ ろの。


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