SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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いも明月栗明月 | ||
お盆の次の満月ば、「いも明月」ち云よった。又その次の明月ば「栗明月」ち云よったたい。 いも明月の時ゃ、里いもば洗うとから、煮ると、供ゆるとまでそのうちの男がしよった。 女は手出すこつは出来(け)じゃったたい。ちようどころあいのよか里いもば皮むいてしおゆ でしたつば、お盆てん桝てんに山盛して供えよった。うちゃ桝に山盛してお三宝に載せて、 お月さんのよう見ゆる奥のお座敷のお縁にかざって供えよった。 夜に入ると村ん子供達ちゃ多人数つんのうて、家から家さん、「いもくれんのー」ちおろう でもろてさるきよった。どこでんお縁ばなてん、お月さんの見ゆる家の前てんに、床(縁台) おいてその上に供えよったけん、子供どんな、めんめん勝手にそのお供えいもば引いて喰べ よったたい。 うちゃ奥の方に供えとるけん、もらいに来た子供たちにゃ別に用意しとる里い もば、わけてやりょった。 いももらいも大正中頃まででこの辺なせんごつなったたい。其のちまでお供えはしよった ばってん。 栗明月は供ゆるとこもありゃ供えんとこもあるち云うふうで、もろてさるくこつは初手か らしよらじゃった。 |