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    夜魚切り
   
  夜魚(よいお)切りち云うて男達がたいまつ作って鋸持って、よさりご飯どん食べた後に時 な、出て行きよった。たいまつの光で川ん中ば照らすと、魚どんが流れの上ん方ば向いて川 底にじーっと眠っとるげなたい。そりば鋸で首んにきてろば、ゴツンち叩くとクルッとひっ くり返って浮くげなたい。そげんしてよう獲って来よった。

よっぽど居りよったらしぅして、二升炊位の鍋によかしこ煮よった。ちょいと行った位でく さい。煮るとどりしこか上通りに上げてくれち女に持たせて上の茶の間にも呉れよった。 あとは自分達の楽みで食べよったたい。村内ん男連中も楽みなり実利なりでよう夜魚切りち云うて行きよった模様たい。

  「うけ」もどこでんよう夜さり川に漬けに行って、朝起き起きに引き上げに行きよったご たる。いろいろな魚どんが、かなり入っとりょったたい。「どぢよ」どんがよう入っとりょっ たけん、どぢよ汁てん出けよった。おむしのおつけに、時のもんのお野菜どんいっしょに入 れて。
うちゃ、そげんして取れたどぢよも時にゃ買うたどぢよも魚かごに入れて、大豆ば一 握いれて、奥の庭井戸によう漬けてありょった。大豆入れとくと、死なんで長う持つるけん、 泥はかする為でもあるたい。


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