SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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竹の皮、ひらくち | ||
竹ん皮は女の収入になっとったけん、女ばかりで取りに行きよった。いまんごつ、地下足 袋てん、ゴム長てんなかもんじゃけん、水掛け、ち云うて古足袋はいて、引切り下駄にあと がけして脚絆つけて着物な古るかボロ木綿着物どん上から着て、てぼ、ちぅて竹で編うだ籠 ばめんめん背にかるうて、青竹の先ばはさみぐちに作ったつば杖ついて行きよった。藪に人 ってひらくち(蝮)ん居るけん、みんな気つけて、ひらくちんおった時ゃ、みんなば呼び集む るげな。ひらくちゃ、ちょいとでん目離すと、どこさんどん行ったじゃり、てんでわからん ごつなるげなけん、見付けた者な、ちゃーんと見よるげな。 ひらくちゃ魔性ち云うげな。そして青竹ん杖のはさみ口ではさみ込うで捕まえよったげな。 獲って来たひらくちは火ぼかしにしといて、馬が競馬に出るとき食べさすっと、とーても元 気ん出てよう走りよったげな。何匹か毎年獲りよったげな。川原ん上ん方の藪がこの辺で一 番ひらくちんおる藪じゃったげなもん。 もう時季も暑うなっとるけん、暑うなるとみんな川原さん出て来て、水浴みしよったげな。 おもとが泳ぎん上手じゃったけん大将で泳ぎよったげな。高良川も初手は水ん多かったもん じゃけん。うちの真竹藪の広かつは大方高良川んはたにあった。竹の皮の落ちとっとは拾う て背中の、てぼ、に入れて、一ぱいになっと、一ヶ所に集めて、また拾い集めて拾うて仕舞 うと束にして持って帰って来よった。持って帰って、裏でまたほし上げて束ねて納しとくと、 上妻ん方から竹ん皮買いに来よったたい。竹ん皮干すとがまたおおごつじゃった。 夕立の頃じゃけん、急に雨どんが降って来っと、がさがさ掻き集めて抱くとスルスルツと、 すん抜けて、バラバラ落つるし気はせくで。竹ん皮は付け根ん方が乾きの悪るかったもん。 裏の方に竹ばすうっと地面に並べて、皮の根っこば竹にのせかけて、斜にして干さにゃなら んもん。 頭にゃ手拭どん被って竹ん杖ついて、てぼ、かるうて、あとかけ下駄はいて、脚絆つけて 行く女どんの格好ちゅうたなら面白かったばい。そこんうちの奥さんが総大将でおもとが副 大将たい。あたしゃ行ったこつぁ無かったけん、竹ん皮干すとしか知らんもん。あたしが代 にゃ、もう竹藪の竹ん皮拾い行きよったとこもたいがい失うなっとったけん、竹ん皮拾いの 大将にもなれじゃったたい。 そりから枝皮ち云うともあるもん。枝皮はうちの藪で、あたしどんも拾うて加勢しよった。 枝皮のこまかつも何か細工物にするとじやったげな。孟宗の皮は広かばってん細工物にも包 み物にもならんげなたい。ばってん後にや、何にするとじゃり買い来よったたい。 |