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    狐・狸
   
  初手は、国分にも、狐てん、狸てん何てんおりよった。
  寒か夜だん、藪ん中で、よう、ギャーち云う雌狐の声どんがしよった。夜ばかりじゃなし、 昼間でん、コーゾコゾコゾち、こうぞ(ふくろう)が鳴きよったが、狸もおりよった。

  今の東国分小学校ん建っとるとこがもとはぐるりが深か藪で、まん中に畑のあって、櫨の 木ば大分植えてあった。その櫨の木んとこに狸がおったげな。茂平次が見つけたげなが、か ねて狸ゃ死んだ、死んだ、ち云うと、死ぬ真似するち聞いとったげなけん、「死んだ死んだ」 ち云うたげなばってん、いっちょん死んだ真似せんで、どんどん逃げだすげなもん。

櫨木にちょいと登る、死んだ死んだち追いかくる、すとんち落ちて又つぎの櫨さん登り、死 んだ死んだで、また次ぎの櫨さん登って、とうとう藪ん中さん逃げこうでしもたげな。いく ら狸でん命ゃ惜しかろもんじゃけん、逃げたつくさい。土台、人間の、言葉も判らんとに、 死んだ、死んだち云うたっちゃ、何の死んだ真似しゅうの。


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