SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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椿 油 | ||
国分の藪ん中にゃ、藪椿ん多かったもんの。 花どきなっと、どこん道でん真赤になるごつ椿ん花の散りよった。村中ん道ちゃたいがい が藪かげ道じゃったけん、どこでんその花ば拾うて、藁すぼの先ば引き結うで、それ花ばさ して、家の入口の横の格子窓ん格子てん、家てん小屋てんの壁んにきどんさげて干しとりよ った。夏蚊ふすべするとたい。実もみんな拾うて堅石油(かたいしあぶら)ち云うて絞りよっ た。 うちも藪の堅石の皮の、ちょいとひわれ目ん出けたころ、ちぎったり、落ちたつば拾うて来 たりして、新宅のお縁まわりの水落ちのとこに石の敷きつめてあったけん、そこにどん干し て口開いたつば、夜取り込うで皮取って、油すめに遣りよった。椿油ち云うばってん、よう 精製せんと臭うしてべたべたしてそのままじゃ使われんもん。 |