SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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蚊ふすべ | ||
蚊ちゃ、ほんに藪ばっかりじゃけん多かったこつとしたもんが。夕方になっとお台所んす みてん流しのかげにゃ、ワーンち羽音のするごつ、そうに蚊のおりよった。外に出て裏ん方 さん行くと顔にばらばら当りよった。昼問からでん、藪ん中さんどん行くと痒かけん掻いた 引っかき傷ばかり出来よったたい。秋から春の終りまではおらじゃったけんよかったたい。 外仕事するとに蚊のをるときゃ、柴てん草てんば燻(ふ)すべとくと、蚊のあんまりせつかん もん。家ん中じゃ縁先にどん椿の干したつてん、みかんの皮の干したつどんふすべよった。 赤司から除虫菊のからどん貰うて来て、ふすぶると、ほんに利きよったばってん、そりもそ げん余計にゃなかもんじゃけん、末松さんの下宿しとんなさったころ陸軍大学の試験受くる ち云うて勉強しよんなさったとき、蚊帳ひいてその中で勉強しよんなさった。初めて蚊取線 香ち云うて出たけん、そりば買うてつけて上げたたい。 こげな小まか線香で利くじゃうかち思うたりゃ、ほんに利くですよち云いなさって、うちの 方もそりから蚊取線香ば立つるごつなった。何せワーンち云うて寄って来るごつおりよった もんじゃけん。 |