SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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蠅 | ||
蠅がまた多かったたい。蠅の多か時季にゃお台所に蚊帳ひいて、蚊帳の裾ば四方とも蚊帳 の天井さんはね上げといて、その下で次の者たちがご飯食べて、済むと一人が中に残って、 外の四人が蚊帳ん四方から一どきにそのはね上っとる蚊帳の裾ばおろすたい。食べてしもう たお膳に蠅がグジグジつくとば待っといて。なかにおる者が、一つ一つお膳ばそろーっと外 さん出して仕舞うて、片隅づつ蚊帳のつり手ば落して一隅だけ残して、中におる者が、うち わでずうっと一隅さん蠅ば追いやって、そして蠅が隅に寄ったとこで、その下ば締むると、 大人の手に山盛り一ぱい位も蠅がとるるもん。それにたぎり湯かけて、退治しよったたい。 そりばってんまたすぐぶんぶん出て来るもん。どこん家にでん馬んおるし、はわきだめてん、 堆肥小屋てん蠅の出来るとこはぐじぐじありよったけん、かねては、こね鉢に水入れて、そ の上に麦わらにトリモチばつけて渡しとくと、そこに止まって後にゃトリモチから水の中さ ん落ちて死によった。のちにゃ硝子の蠅取瓶てんが出けて来たたい。ばってん、間尺(ましゃ く)にゃ合わじゃった。 |