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    お汐井ふり
   
  初手はお汐井ふりちしよった。此辺な大正頃迄は、組内ば廻しで振ってさるきょった。災 厄に会わんごつ、お神の水で清むっとげな。お汐井たこ(手桶)ち、さし渡(直経)三、四寸高 さ一尺、ばかりの蓋のある手桶に、お水ば入れて、杉の葉ば浸けて、そっで家々の門ロにぱ らぱら振ってさるきよったたい。

  お神や、氏神さんてん、高良山てんじやった。それぞれ日の決っとるけん、その日に当っ た家がおしおい汲みに参って振って廻りょった。そして手桶ば次の当番さん渡しよった。 夏高良山にお汐井汲みに行くとはほんに気持のよかもんじゃった。まだだーりん登りょら ん、大っか杉の生い茂っとる下のしっとりした坂道ば登って行くとヒヤーッとした何とん云 えんすずしさのあったたい。上に登っと大木の間から、遠うか大河てん野原てんのチラチラ 見晴されて。

  本坂の北側さん廻っと社務所の下辺りになるとこに、清水の湧きょった。その水ば手桶に 汲んで、神前に供えて、持って帰って、組内の家々の門口に杉の葉でお汐井水ばパラパラ振 って廻りょった


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