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    村の世話役
   
  お祖父っつあんな、早よから隠居はしとんなさったばってん、村んこつてんよう世話しよ んなさったふうじゃん。
その頃までは世間も一般が、そげんめんめんの意見ち云うもんば、 云いたてきるごたる者も少なかっつろもんじゃけん、元庄屋の国分和蔵さんてん、神代寅二 さんてん、三、四人で話ば付くっと皆がよう云うこつ聞きよったごたるふうで、あの三、四 人がおんなさったときゃ国分ん村もコトッとん云わじゃったたい。区財産なかにして、小ま か村内で両派に分かれてやんやん騒ぐごつなったつは、後のこつたい。

  清水の道からちょっと東に入ったとこ、今の柳の海苔田の北の方に、村倉んあって、そこ にゃ、かねて米の出けた時に、どりだけづつか百姓全部が米ば持ち寄って預けよったたい。
むかし殿様のお達しで始めた備荒貯蓄が事のはじまりげな。そして出来秋まで米の保たん者 が、その預けた米ば借り出して食べつないで、僅かじゃっつろが、どりしこか付け足して米 の出来たとき返しよったげな。そりが、だんだん殖えてのちに区財産ち云うてだいぶん有る ごつなったたい。財産が多なりゃ財産あらそいが起るごつなるとたい。   


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