SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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戦勝記念の催し | ||
日清戦争に勝ったのち、どこでん、三味線太鼓ではやして、作り物の車引いて、一組つつ 組んで練ってさるいたたい。 うちは織屋しよった時じゃけん、何かしたがよかろち、織屋ん者が云うもんじゃけん、虎 ば作ったたい。その頃は輜重輸卒ちはなかったもん、夫(ぶ)ち云う役のあったたい。そりが 虎ば生けどって来たちうとこで、虎ば作ったったい。 お父っつあんの工面して作んなさった。うちん小屋んなかで、竹で籠ば編うで、それに餅 粟(もちあわ)と普通の粟の穂ば結びつけて、虎の毛並ば作った。茶色がかった餅粟と黄色の 普通の粟ん穂とで、ほーんに本物んのごつよう毛並みん出けたたい。口は唇も口んなかも、 赤ぎれで作った。足ん爪にゃ大っか"らんきょ"(らっきょ)ばつけてとてもよう出けた。誰が 見て云うたもんか、あすこん作りもんな、爪がほしかち云うたげな。その虎ば車に載せて引 き廻したたい。 車引く織子たちゃ紺のハッピに、衿に白紙で、にわか国真舎、ち切り抜いて貼ったつば着 て、紺のパッチ作ってはいたたい。髪は"おりい"に結うた。三味線な町芸者ば雇うて"今年や 豊年、穂に穂が咲いて、黄金桝にて米はかる"ちう文句の歌ばうとうて街の方までさるいた。 "今年や豊年"ちう歌は、三番叟のなかにある歌げなたい。前ん晩大ごつじゃん、織屋ん者 どんがみんな集って、どんどん歌のけいこしたたい。当日は織子たちみんなで、その歌ば歌 うて練ってさるいて、ほんに面白かったたい。 八枝の組や白木綿で巻いた大っか二股大根作って、卓に載せて引いてさるきょったりゃ、 足形堤に車ごつ落てこうで、大根洗いしよるち云うて大笑いじゃった。 |