SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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府中与市 | ||
府中与市の話や、お祖父っつあんのよー話てきかせよんなさった。大慈院様(頼僮)の頃の こつげなたい。 府中(久留米市御井町)に、与市ち云うて居ったげなたい。その与市が走っとのそーに早か も何も、さらし一反ば、一回おなかに巻いて、あとの残り布ばうしろに長う引いて垂らした つの、地に着かんごつ早よ走りきりょったげなたい。そりがかねて何どんして暮しょったも んじゃり、ぶらぶらしながら暮しょったげな。 その頃博多にゃ、盗人ん夜さりほんには入るげなばってん、誰が盗みよるじゃり一向わか らじゃったげな。そりばってん、とうとう盗みよる現場ば捕められたげな、久留米領の者ち うとこで、こっちの藩さん福岡藩から送られて来たげな。そりが府中与市じゃったげなたい。 そしておしをきなってさらし首にされたげな。 夜さりゃ遅う迄近所ん者と話したりして遊うどって、みんなが寝静まって、こっそーっと 抜け出して、どんどん走って博多迄行って盗うで、又どんどん走って、夜の明くる前こっそ ーっと帰って寝て、朝は皆と同じ頃何喰はん顔して起っとるげなもんじゃけん、そげん博多 迄ん行って盗人しよるてん何てん、近所ん者もだーりん知らじやったげなたい。 今どんならの、マラソンの選手にどんなりゃ大した者じゃっつろがのー。 |