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    家中内の気ちがいさん
   
  ほんにもとの家中内は気違いさんの多かったもんの、血族結婚の多かったけんでもあろが 世間のこつも色々あっつろたい。今と違うて上から押さえつけらるゝこつばっかりで。

  きまったお扶持で、家族何人でん身分に相応の体面作って暮らさにゃならんけん、一家の 主人な並大低なこつじゃなかっつろたい。ことさらお部屋住みてん何てんな、当主から、何 彼につけてすねかじりのいらん者扱いにゃさるゝし、よっぽどの器量の無かなら、お召し出 しにあづかるこつはなし、一生奥さんもよべんし、自分の芽の出る処はなかったもんじゃけ ん、姑、嫁の間がらも、今からは考えられんむつかしかこつだらけで。そっでん一通りの禄 頂いとりゃまあちったよかっつろばってん、禄の少なかりゃ気づまりもよけい多かっつろた い。それしてん、昔や庄島にゃ気違いさんが多かったらしうして、庄島の名物は、ミカンと カツオ菜と狂人ち云よったたい。


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