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    嫁入り道具運び
   
  おっ母さんの、うちにお入ったときゃ、上郡から道具ば持ってお入ったけん、五里はあるもん じゃけん、大ごつじゃっつろたい。

  初手は、持って来た者達にゃおご馳走てんお酒てんば、どんどん出しょったたい。そっでんお ごちそでんお酒でん、さんざんたべたり呑うだりしとっとに、帰るだんになっと、お酒ん足らん じゃ何じゃち、文句付くっとが習慣のごつなっとったもようたい。上郡のその連中も、まあだ酒 ん足らんち云よるげなもん、帰りながら。

そり聞いて、こっちの男達ん、そげなこつ云われちゃちばかり腹かいて、武蔵(むさし)ちゅう 大っか一、二升も入る塗物の大盃と、酒樽持って追いかけて行って、隈山の川原山(こーらやま) あたりで追いついて、どんどん飲ませたげな。そしたばってん又どこかで、寄っちゃ呑み呑みし ながら帰ったげな。

  翌日か何か久しうかかって帰って来たげな、田ん中の道ば帰って来よっとの岡野からよう見ゆ るげなもん、ゴソーゴソ這うて帰って来よるげなもん。どっでんこっでん。ほんにどうしてあげ ん呑まにゃんもんじゃりの。

  山本の茂樹さんに、こまおさんのお入った時も道具持って来た者に、あっちは酒どこ(城島) じゃけん不足云われんごっち、云うて、どんどん飲ませなさったばってん、どうか云うた者の居っ たげなけん、そーらちばかりまた飲ませなさったげなりゃ、動きん取れんごつなった者もあった けん、帰りにゃ車力に、頭ば下になるごつして、きびっつけて帰りよるげなけん、逆さまに頭ん なって、血ののぼって悪かっつろち、加勢人達の云よった。その車曳いて行きょる者もよろよろ じゃったげな。


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