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    ふるい記憶
   
  あたしと、妹のつっちゃんな二つちかいじゃったけん、つっちゃんの出来るまであたしゃおっ 母さんの乳のみよったげな。つっちゃんの出けたけん、あたし、乳は止めさしゅうでち、おっ母 さんの乳に胡椒ば塗ってあったげな。「ミチヨしゃまん、ああ辛ら、ああ辛らち云うて口ば押え て出て来なさってから、もう決して乳ば飲もうでちゃしなさらじゃった」ち、おもとが云よった。

おもとは居ったばってん、守乳母で、おもとの乳は飲みゃおらじゃった。高皇宮(こうさん)か ら、おもとに負はれて帰って来て、おっ母さんの乳飲うだりゃ、そげん辛かったつば、かーすか に憶えとるもん、そりがあたしん記憶の一番古かつらしかたい。

  おっ母さんのどこかにおいる時ゃ、ようお留守番しとったたい。与子田の敏しゃんのおっ母さ んの教行さんにお入ったときゃ、どこかに、おもとに遊びつれて行ってもろとった。そして、今 日は、半斗瓶かぶっととじゃんち云うたつば憶えとったい。初手は留守番するこつば半斗瓶かむ るち云よったたい。


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