SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語
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枇杷の種 | ||
いつか枇杷の熟るるころ、おばやいと、お医者さんに行ったりゃ、先生の奥さんの、枇杷ば 上げてんよございまっしゅかち先生に聞きょんなさったりゃ、皮と種ば取ってあげたならよか ろち、じゃったけん、そげんして、あたし食べさせなさったところが、そん時あたしが種どん 拾うて食べとったじゃろたい、帰って来てひきの引いて大さわぎじゃった。 舌噛まんごつ、おしゃもじば口に入るゝやら、家にゃ相憎、皆んなんごつ出払うて、ばばさん と、おっ母さんとおもとだけで、ちょいとお医者さんに走る者もなし、ておーざおーしょった 時、裏から田中ん勘左(かんぜ)さんの何か用のあって入って来て、そんならあたしがお医者 さんば呼うでくうち云うて、走って呼び行かっしゃったげな。 あたしゃ、何ちゃひきの引いて騒ぎょったたい。浣腸しなさったげなりゃ、枇杷ん種んいくつ でん出て来たげなたい。そん時お宮ん横ば負われて帰って来たつば覚えとる。もうつっちゃん な居らじゃったけん六ッの時じゃっつろたい。 |