SNK >> デジタルアーカイブ >> 初手物語


    人のなさけ
   
  其頃は、ほんに色々あちらこちらから、何や彼ゃでお世話して頂くこつばっかり多かりょったもんの。
  あたしが、一番うちん困っとった時も、前からん行きがかりで、町の婦人会の役員どんしとった けん、よう何じゃ彼じゃち云うて出て行くこつん多かりょった。出て行きゃ色々講師の先生たち からお話ば聞くこつん出けて、自分の気持のほんに助かりよったもん。

そりばってんお父っちゃまんそりば好きなさらんこつが、生意気になるち云うて、そすと国分郵 便局長さんの稲富の清太さんと奥さんの、おゆきさんの、そげんじゃけんなおお話しどん聞かじゃ こてち云うて、出るごつすすめなさるし、お父っちゃまにも出さじゃこて、ち云うてやりょんなさった。

  学校の運動会の時てんも、婦人会もかたったりしよったけん、おゆきさんのお弁当は、あたしが ああたの分迄持って行くけん来なさい、運動会にどん出ると、気も晴るるたい、ち云うてお弁当 まで作って頂いて連れて行って頂いたりしょった。 困ってどんこんならん時も、よう都合して頂いたりして、ほんにお世話して頂いた。恒がこの家 建ててくれた時も自分のこつんごつして喜うでやんなさったたい。そげなふうで、あちらこちら から、親切にして頂くし、腹の立つこつもそりゃほんに多かったばってん、お話聞いたりするい きに、そりも考え直しんでけて行きょったたい。


前のお話へ  戻る      次へ  次のお話へ